2005年10月27日

さらにオリジナル小話アップ

去年の今頃にあとちょっとで終わるとこまで書き上げてそのまま放置されてたのを手直し。
去年いろいろあって唐突に創作意欲が失せたので、書きかけのが3~4本あるのです。
1本はこのオリジナルの「台風」。100題っぽい雰囲気を意識して書いてみました。
他には先日手直し&大幅加筆して同人誌に載せた「桜水晶」。
もう一本は既に5ページ分くらい書いててあと少しで終わりそうなのにオチの思い出せないオウレンジャー。
他にはFFXIのオリキャラものとか・・・。
今、なんだか小説意欲が沸いてるので、近いうちに全部完結させたい予定。

そんなわけで以下、オリジナルのSS。
設定はオリジナルカテゴリの「『大地の蓋』設定」参照で。

「台風」   央野迷子


 薄暗く垂れ込めた空。唸るような風の音。揺さぶるように時折低く伝わる振動。
 シャワーのような雨が窓ガラスを叩く。
 見下ろすと、地上では激しい風雨に水面が波立ち、係留されたボートや古くなった桟橋の残骸が無数に波間を漂っているのが見える。
 窓枠に浅く腰掛けて、立川洋一はもう10分ほども、そんな外の様子を眺めていた。
「なぁ、もう水が三階の半分くらいまで来てるらしいぜ」
「マジ?四階に妊婦いなかったっけ?」
「おい圭吾、あと恵!おまえらボート見て来い。あとロープ補強な。やばそうなら上に運ぶから報告しろよ」
「小津さん、屋上の扉から水が武器庫に流れ込んでます!」
「すぐ塞いで来い!いや、先に武器移せ!松、おまえも手伝え」
「はい!」
 洋一の後ろでは慌しい声と足音が飛び交っている。走り回る少年達の間で指示に追われているのはジュディアン・小津である。
 洋一はそんな周囲の様子をしばらく眺め、再び窓の外を見つめた。
 雨も風の音も少し弱まったようだった。洋一はわずかに目を細めて窓の外を注視する。
「洋一、おまえもちょっとは手伝えよ」
「人手は足りてるだろ?頼りになるサブリーダーもいることだし」
 振り向いてにやりと笑うと、ジュディアンは顔を顰めた。
「雑用係の間違いじゃねぇの?」
「そんなことないって。本気、ホンキ」
 洋一の満面の笑顔にジュディアンは疲れたようにため息をつく。
「で、何でさっきから外ばっかり見てんだよ。楽しいか?」
「面白れぇじゃん。俺、台風とか雷とか見んの好きだし」
「おまえなぁ。下の方に住んでるヤツは大被害だぞ。この天気じゃ明日の仕事も心配だってのに」
「明日は中止だ。この分じゃ向こうだって移動は無理だろ」
「中止って、こっちからは断れないだろ。見たところ雨も治まってきたみたいだし……」
 言って、ジュディアンは窓枠に手をつき、洋一の傍らから窓の外を覗き込む。
「風も止んで来たな。・・なんか急に晴れてきてないか?」
「さぁどうかな。今回の台風はこのあたりは直撃って聞いてたし、こうあっさり治まるとも思えねぇけどな」
「っていっても、実際治まってるように見えるけど?」
「だから、台風の目にでも入り込んだのかと思ってさ」
「台風の目?」
 ジュディアンは眉をひそめて洋一を振り返った。
「って…なんだそれ?」
 怪訝そうなジュディアンの眼差しを受けて、洋一は軽く笑う。
「台風ってのは巨大な空気の渦巻きなんだそうだ。その渦巻きの中心を台風の目っていって、直径40キロくらいの大きさらしい。で、台風の目の中は風が弱まって場合によっては晴れたりもするらしい。ただし台風の目の周辺は暴風が吹き荒れてて、台風は現在移動中」
「……なるほどね。ってことは、その台風の目とやらを抜けたらまたさっきの状態に逆戻りってことか?」
「たぶんな。まぁ、実際にこのへんが台風の真ん中なのか、それとも本当に台風が行っちまったのか、それはもうちょっと様子を見てみないとなんとも言えねぇけどな」
 言って、興味深げに外の様子を眺める洋一の顔をジュディアンはじっと見つめる。
「おまえってさぁ、なんか変なことよく知ってるよな」
「変なことって?」
「この間はなんだっけ?拾った古い計器の目盛に『°F』って書いてあって、オレ達がなんだろうって言ってたら外国の温度の単位だって言ってたよな。その前は・・・避雷針の内角60度以内は雷が落ちないとか言ってなかったか?」
「そういや、言ったような気もするな」
 相変わらず薄く笑みを浮かべて、洋一は出方を伺うようにジュディアンを見る。
「そういうのってさ、どこから仕入れてくるわけ?」
 ジュディアンはさらに問いかけた。ジュディアンの妙に真剣な表情にはぐらかすのを諦めたのか、単に追求をかわすのが面倒になったのか、洋一は苦笑を浮かべる。
「百科事典みたいなヤツがいてさ」
 再び窓の外を見つめてつぶやくように言った言葉が、まるで懐かしんでいるように聞こえて、ジュディアンは意外そうに瞬く。
「ヒャッカジテン?……って何だ?」
「やたらいろんな情報が詰まったデータベースみたいなヤツがいたってこと」
「ふぅん。それって女?」
「女…?」
 洋一は意外そうに繰り返して、眉をひそめた。
「女…女ねぇ…」
 珍しく煮え切らない態度で首をかしげる洋一を、ジュディアンはじっと見つめる。
「なんだよ、じゃあ男なわけ?んなわけないよな、その言い方じゃ」
「まぁ…女であることは確かだけどさ……」
 洋一は複雑な表情で肩をすくめる。
「ま、今頃は『女』って感じになってるかもな。…あんまり想像つかねぇけど」
「なんだよ、ガキか?」
「さぁ、どうかな」
 洋一はにやりと笑って、話を打ち切るように窓の外に視線を移す。
「今頃どうしてるんだか」
 つぶやいた声は、やはり懐かしげに聞こえた。

<<FIN>>



「歩く百科辞典」な彼女は、夜空に出てきた彼女です。
舞台設定は「夜空」の半年前くらい。
このお話、本当は杏子登場の伏線のつもりだったんですが、
杏子の話を先に書き上げてしまって意味がない感じ。
この話、いざ続きを書いてみたら、
どっちの視点でもないし、感情描写もないし、
完全に台詞と行動の描写しかなくてやたら続けにくかったです。
いまさら片方の視点にしたり、感情描写を入れるのも変なので、
台本のように最後まで同じ感じで書いてみました。

投稿者 mokemo : 10:45 | コメント (0)

2005年10月26日

『大地の蓋』設定

そんなわけで、昨日唐突に載せた謎の乙女SF小話の補足。
以下、設定です。

コメント等で(小話の)感想いただけると非常にうれしいです。
(ここを見てる人が何人くらいいらっしゃるのかさっぱり想像つきませんが・・・・)

■世界設定■
50年後くらいの地球。温暖化により世界は水没気味。
人々は地下のシェルターか、荒廃した地上世界、もしくは山に住んでます。
見渡す限りの海っていうよりは、地上3Fくらいまで沈んで、頑丈なビルはそのまま残ってる感じ。
・・・あれ?50年後って私生きてますね!
えーと、100~150年後にしておこう。(いい加減)
要するにコバルト文庫とかにありがちな乙女SF小説もどきなので、あまり細かいところには突っ込まないでいただけるとありがたく。
そもそもこの話を考えたのが高校生の時だったのでいろいろ痛いです。
少女小説らしく、萌えとお約束を追求する所存。


■人物設定■
・立川洋一
26歳(←少女小説を逸脱した年齢。昔は21歳でしたが・・)。O型。
新宿区出身。現在は神田付近にいる模様。
10代後半~20代くらいの青年たちを集めて、なんでも屋のような仕事をしている。内容は護衛、奪還、人探し、荷運び等。
その筋では有名らしい。あまり自分の過去を話したがらない。
性格は気まぐれだが情が深く面倒見がよい。保護欲旺盛。
気に入った人にはつい意地の悪い事を言ってしまう面も。主人公。

・上遠野杏子(かどおの きょうこ)
24歳。B型。
地下シェルター出身のお嬢様。天才的な頭脳を持つ科学者、エンジニア。
人探しのために、単身地上に現れる。
理性的で冷静。潔癖で神経質。
無口無表情無愛想という景麒みたいな人。コミュニケーション能力と情緒が欠落気味なところも景麒っぽい。
性格はいたって淡白で、常に淡々としている。洋一とは古い知り合いらしい。主人公その2。

ついでに、近いうちにアップできそうな関連小話に出てくる人も補足。

・ジュディアン・小津
26歳。0型。上野出身。
洋一の相棒。サブリーダー。世話好きで面倒見がよい。
人がいいので、洋一の気まぐれの後始末をする羽目になることが多い。
三人兄弟の一番上。洋一に蹴りを入れることが可能な唯一の人。


■「夜空」補足■
時間設定は、杏子が地上に上がってきて一週間後くらい。
杏子は10年ぶりに再会した洋一の変貌に戸惑い気味だが、洋一がよくわからない性格というよりも、単純に杏子の観察眼とかコミュニケーション能力が足りてないだけだったり。
たぶん洋一的には自分がそんなに変わったとも思ってないし、10年ぶりに再開した変わり者の知り合いがおもしろくてしょうがない感じ。

投稿者 mokemo : 11:29 | コメント (0)

唐突に

23日のイベントと、9月末からの原稿ラッシュ(ゲスト→自分原稿1→自分原稿2→自分原稿の大量の手直し→プレゼント原稿)、そして先日「オリジナル楽しみにしてたのに~」と言われてうれしかったりで、唐突にオリジナルが書きたくてたまらなくなりました。
書きかけであとちょっとで終わる小話があったので、それを完結させようと思ったのに会社からは見れず。(←そもそもそこが会社というのが問題)
「なんか今なら書けそう!今を逃したら書けなくなりそう!」という衝動に突き動かされて、会社でみちみちと書いてしまいました。
・・・・ちゃんと勤務実績時間からはマイナスしました。ええ。
そんなことしてたせいもあり、今日が受け持ち申請の一つの締め切り日だったこともあり、今日は21時過ぎまで残業するハメに。自業自得・・・。

とりあえず、まだオリジナルコンテンツも作ってないので、ここに載せてみます。
オリキャラです。15年くらい胸の中で暖めてる(というか頭の中で妄想の限りを尽くしてるというか・・)のオリキャラ達です。
読んで楽しいのはきっと私と日詰さんくらいでしょう・・・。
コンテンツ作るまで、ちょっとここに置いときます。本文に載せるのも気が引けるので追記にしとこう・・。
(注:SFです。世界設定とキャラ設定は明日にでもまったり書きます)


 夜空       央野迷子

 ビルの屋上から星を見ていた。
 ひび割れて細かな水滴が滲んだコンクリートの床の上に、落ちていたダンボールを敷き、その上に厚手のハンカチを敷いて腰掛ける。
 自分がこんな不衛生なところに抵抗なく座る日が来るなんて、ほんの数ヶ月前には予想もつかなかったことだ。
 大きく息を吸い込むと濁った海水の匂いにむせそうになるので、薄手のハンカチを口に当ててそっと息をつく。
 夜空はガスと浮遊粒子状物質でどんより曇り、けばけばしいネオンが光化学スモッグに反射していっそう景色を見えにくくしている。
 かろうじて見える星は、位置から考えてわし座の1等星アルタイルだろう。
 汚染された空にわずかに瞬く星々。地下の美しい人工の夜空は数分も見ていれば飽きてしまうのに、弱々しく光る本物の方は飽きずに見つめてしまうのは何故だろう。
 そこまで考えて杏子はわずかに苦笑を浮かべた。といっても、その苦笑は口角が1、2ミリ上がった程度の微かなもので、本人ですら気づかないようなものだったが。
 ------どうかしている。こんなことを考えるなんて。
 目を閉じて、瞼に指先をあてる。地下で育った杏子に、地上の大気はたまに痛みをもたらす。
 ------この数週間いろいろな事があったから、少し疲れて感傷的になっているのかもしれない。
 杏子はそっとため息をつく。そこへ、コンコンと小さく壁を叩く音が響いた。
「お邪魔?」
 ひそやかで楽しげな低い声。振り向かなくても、こんな風に杏子に声をかけてくる相手なんて一人しかいない。
 無言を肯定ととったのか、それとも始めから返事なんて聞く気がないのか、湿った床を気にするそぶりもなく、洋一は猫のような身のこなしでするりと杏子の隣に腰を下ろす。
 洋一はいつも気配がない。いつでも音もなく近づいてきて、1メートルくらい手前で律儀に手近なものをノックする。それは壁だったり、机だったり、空き箱だったりして、でも決して突然真後ろから声をかけるような無遠慮な事はしない。
 よくわからない人だと思う。人の返事なんて聞かずにさっさと近づいてきて、でも律儀に人ひとり分のスペースを開けて座る。気まぐれに好き勝手に振舞っているようで、相手が嫌がるような事はしない。
「ホンモノの空が珍しい?」
 笑いを含んだ声で言って、洋一は湿った床にごろりと寝転がる。
 珍しいのだろうか。杏子は自問する。
 確かに本物の夜空を見たのは初めてだが、映像では何度も見たことがあるし、知識としては知っている。本物の空は映像と違ったかというとそんなこともなく、知識として知っていた通りで意外な点もなかった。
 本物の空というものを実感したのは、空そのものよりもむしろ吹き抜ける湿った潮風であるとか、目を刺すメタンガスだとか、澱んだ海水の匂いだとか、そういった皮膚や五感の刺激によってだった。
 しかしそれはわざわざ話す程の事には思えなかったし、そもそも杏子は主観を言葉に出す事にあまり意味を感じない。
 無言のままの杏子を洋一は特に気にした風もなく、腕を枕にして薄明るい夜空を眺めている。沈黙が流れた。
「なぁ、あの星ってなんて名前?」
 洋一は唐突に言って、夜空を指差した。
「ベガだと思うけど」
 杏子は淡々と答える。何がおかしいのか、洋一が笑った。
 再会してからの洋一は周囲の言動を面白がるかのようによく笑うが、その笑顔はなんだかとらえどころがなくて苦手だった。そうやって洋一が笑う度に、杏子はいつもわずかな居心地の悪さを感じる。
「珍しいな」
「……何が?」
 洋一の言葉の意図が掴めず、杏子は仕方なくそう問う。
「『だと思う』って言い方が。断言できない理由は?」
「別に…」
 杏子は言いかけて、興味津々といった表情の洋一を見て言葉を止める。
「……季節と位置と明るさから考えて間違いないとは思うけど、私が見た資料は20年も前のものだし、意識して夜空を見たのも初めてだから……」
「なるほどね」
 洋一は再び軽く笑って、夜空を見上げる。
「昔さ、星の名前には由来があるって言ってたじゃん?」
「神話のこと?」
「ああ、確かそんなやつ」
 杏子はつられるように星を見上げる。
「その星はどんな話?」
「琴座は…」
 言いかけて、杏子は咳込んだ。重さを感じさせない動作で洋一が起き上がり、傍らから何か掴んで杏子の前に差し出す。
 咳込みながら目で追うと、洋一は手の中のボトルを捻って、プラスチックのキャップを外した。
「ほら」
 差し出されて、杏子はそのボトルに口をつける。咽喉を流れていく水は匂いもくせもなく、飲みやすかった。
「未開封ミネラルウォーター。ちなみにここでは高級品」
 にやりと笑って、洋一は杏子の目を覗き込む。
「お代は経費でつけとくから」
 杏子は無言で水を飲み込み、ほっと息をついた。
「……ありがとう」
 ミネラルウォーターなんて、地上で見たのは初めてだった。もちろん高級品なのだろうし、きっと手に入れるのも難しい品物だ。地上に来たばかりの杏子にだって、それくらいの予想はついた。
「どういたしまして」
 洋一が笑う。いつもの笑い方と違う気がした。
 なんだかほっとして、杏子は洋一を見上げる。
「さて、そろそろ中入ったら?気管支炎にでもなられちゃ困るし。どうせ中も空気が汚れてんのは同じだけど、外よりはマシだしさ」
 杏子が小さく頷くのを確認して、洋一は立ち上がって扉を引く。杏子はミネラルウォータのボトルの蓋をしっかり閉めてから、ゆっくり立ち上がった。


<<終わり>>

投稿者 mokemo : 00:47 | コメント (0)